2026年F1第11戦ハンガリーGP ランド・ノリス(マクラーレン)

【】【中野信治のF1分析/第11戦】王者マクラーレンの優勝戦線復帰。前半戦で見えたトップ4チームの車両特性と強み

8月6日

 ハンガロリンクで開催された2026年F1第11戦ハンガリーGPは、ランド・ノリス(マクラーレン)がポール・トゥ・ウインで今季初優勝を飾りました。

 今回は大型アップデート投入でポテンシャルを上げたマクラーレン、アストンマーティンの戦いぶり。シーズン前半戦におけるトップ4チームの車両特性について、元F1ドライバーでホンダ/HRCの若手育成を担当する中野信治氏が独自の視点で振り返ります。

☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 前年王者ノリスとマクラーレンが今季初優勝を飾ったハンガリーGPは、決勝の戦略が各チームで分かれたこともあり、非常に面白いレースでした。サマーブレイク前/夏開催のハンガリーGPは、気温・路面温度が高めでタイヤのデグラデーション(性能劣化)が早く、さらに滑りやすい路面です。また、長いストレートがなくオーバーテイクが難しいコースレイアウトといった要因により、タイヤ戦略が分かれました。

 ただ、そんななかでスピードを見せたのは、リヤウイング、フロアボディ、フロントコーナー(2カ所)、リヤコーナーの計5カ所にアップデートを投入したマクラーレン勢でした。ポールポジションを掴んだノリスの予選での一発のアタックは、ノリス自身のスピードセンスが成せる技だったとは思いますが、そのノリスの腕に応えられるクルマになってきたと感じます。

 アップデート前のマクラーレンのクルマはストレートは遅かったと思いますが、コーナーは決して遅いクルマではありませんでした。ただ、その分タイヤのデグラデーションが早いというキャラクターでした。今回のアップデートで全体的にダウンフォース量が増え、その分コーナリングスピードが増加。ダウンフォースが増えたことで、タイヤのデグラデーションが少し抑えられたという印象です。

 さらにいえば、ハンガロリンクはマクラーレンが得意とする低中速サーキットでした。アップデート自体もしっかりと機能したようで、強いマクラーレンが帰ってきたなというのが、ハンガリーGP最大の印象です。オスカー・ピアストリ(マクラーレン)はリタイアに終わりましたが、レースペースは悪くなく、何事もなければ勝っていた可能性もゼロではありませんからね。ノリス、ピアストリのマクラーレン勢が優勝戦線に戻ってきたことで、サマーブレイク明けに向けて楽しみな要素が増えました。

2026年F1第11戦ハンガリーGP フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)/フロービズ使用

 アップデートといえば、アストンマーティンが16カ所もの大型車体アップデートを投入しました。フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)が今季初Q2進出を決めたことからもわかるように、このアップデートによる戦力向上はかなり大きかったと思います。開幕から11戦目で待望の本格アップデートとなりました。

 ハンガロリンクが、一番のアップデートが効果を発揮するサーキットだということをアストンマーティンは調べ尽くしていたと思います。ストレートが短いハンガロリンクは、パワーユニット(PU)側の不利な部分にマスクをかけてくれます。空力が大きく変わった車体によりコーナリングスピードが増加した分、タイムゲインを大きく得られるハンガロリンクで大規模アップデートを投入する戦略は、彼らの想定どおりなのかなと思いますね。

 私はアップデート投入により、予選ではアストンマーティンが『キャデラックを上回り、ウイリアムズとポジション争う』くらいまで来ると予想していました。実施はキャデラック、ウイリアムズを上回った上に、アロンソがハース勢に食い込んでQ2進出を決め(Q1結果:15番手エステバン・オコン/ハース、16番手アロンソ、17番手オリバー・ベアマン/ハース)、いい意味で予想を裏切ってくれました。

 先述のとおり、ハンガロリンクのコース特性に助けられた部分もありますが、アップデートがしっかりと機能したことが証明されたことはアストンマーティンにとって非常にポジティブです。ハンガロリンクではストレートスピードで遅れをとっていましたが、サマーブレイク明けの次戦オランダGP(8月21〜23日)にはホンダがアップデート版PUを投入します。さらなる前進の鍵は、ホンダPUになるのは間違いないですね。

2026年F1第11戦ハンガリーGP
2026年F1第11戦ハンガリーGP レーススタート

 さて、車両サイズ、タイヤサイズが小さくなったり、PUの内燃機関(ICE)と電気エネルギーの比率が50対50になるなど、車両の技術規則が大幅に変わった激動の2026年シーズンも、ついにサマーブレイクを迎えて前半戦が終了しました。個人的な感想としては、オーバーテイクが増えている部分はポジティブに受け止めています。

 PUの電気エネルギーを使用し続けるとエネルギープア/電欠が起きるため、ドライビングスタイルがこれまでとはまったく変わりました。特に電気エネルギーを消費するストレートが長いコース、エネルギーを回生する場所が少ないコースだと、リフト・アンド・コースト(編注:電気エネルギーを効率良くリチャージするために、アクセルを戻し/リフト、惰性/コーストで走行する走り方)を多用するようになり、現役ドライバーのなかには『つまらない』と言う人もいますし、ファンのなかにもそう感じる人もいらっしゃるかと思います。

 私自身はオーバーテイクが増えていることはポジティブに受け止めています。PU開発競争、エネルギーマネジメントの駆け引き、アップデート投入による勢力図の変化、そしてオーバーテイクが増えたことによるF1の面白さは、これまでのF1と同じ、もしくはこれまで以上にエンターテインメントの面でも魅力や面白さは増えており、全体的に非常に面白い前半戦だったと感じています。

■メルセデス、フェラーリ、レッドブル、マクラーレン/トップ4チームの車両特性と強み



(Shinji Nakano まとめ:autosport web)