2026年F1第12戦オランダGPで使用されたセーフティカー(SC)

【】ドライタイヤでも『セーフティカー先導スタート』が可能に。観客も驚いたSCサイン点灯/新時代のF1解説第9回

9月2日

 今年のF1第12戦オランダGPの決勝レースでは、少し珍しいシーンが見られた。それは、全車がドライタイヤを履いた状態で、フォーメーションラップがセーフティカー(SC)先導で行われたことだ。

 スポーティングレギュレーションのセクションBの第5条10項1では、次のように定められている。

「予定時刻に本コースの状態がTTCSスタートに適していないと判断される場合、フォーメーションラップをセーフティカーの先導によりスタートする場合がある」

 TTCSとは、『Total Time Classified Session』の略で、直訳すると「総時間で順位付けされるセッション」となり、いわゆる決勝レースやスプリントのことを指す。この表現は、2026年のレギュレーションから国際自動車連盟(FIA)が使用しているもので、LTCS(Lap Time Classified Session=ラップタイムで順位付けされるセッション)、いわゆるフリー走行やスプリント予選、公式予選と区別するために使用されている。

 オランダGPではレコノサンスラップが開始する直前に雨が降った。雨はすぐに上がったものの、スタート前の路面は完全なドライではなかった。そのため、レースコントロールは通常のスタンディングスタートではなく、上記のレギュレーションに則ってフォーメーションラップをセーフティカー先導で行うことを決めた。

 セーフティカー先導によるフォーメーションラップには、ふたつの方法がある。ひとつは全車にウエット天候用タイヤの使用を義務付けてから行う方法だ。この場合、フォーメーションラップが開始する10分前にセーフティカーのオレンジライトが点灯し、レースコントロールから「FORMATION LAP(S) BEHIND SAFETY CAR(セーフティカー先導でフォーメーションラップ)」というメッセージがすべての競技参加者に送られることになっている。

新時代のF1解説第9回
2026年FIA F2第8戦スパ・フランコルシャン セーフティカー(SC)のオレンジライトが点灯している
新時代のF1解説第9回
レースコントロールからの指示に従い、セーフティカードライバーは点灯させるライトのボタンを押すことになっている

 このひとつ目の方法は、昨年までも行われていたやり方だ。

 しかし、今年のオランダGPでは午後2時50分にそのようなメッセージはレースコントロールから出されることはなく、代わりに午後2時51分に「ノーマル・グリップ・コンディション」というメッセージが出された。その後、午後2時55分にレースコントロールは「セーフティカー・ライト・オン」のメッセージを出した。これがセーフティカー先導によるフォーメーションラップを行うふたつ目の方法で、2026年にレギュレーションに新しく追加された方法だ。

 フォーメーションラップをセーフティカー先導で行うものの、ウエット天候用タイヤの使用を義務付ける必要がないと判断した場合は、5分前シグナルの時点でセーフティカーのオレンジライトを点灯し、セーフティカー先導でフォーメーションラップを行うというメッセージがすべての競技参加者に送られることになっている。この場合、ウエット天候用タイヤの使用義務はなく、ドライバーはスタートで履くタイヤを自由に選択できる。

 セーフティカー先導でフォーメーションラップが開始すると、コース脇のマーシャルポストでは『SC』のサインが出される。雨のなかでセーフティカー先導で何周も走る光景は見たことがあるが、ドライタイヤでフォーメーションラップをスタートし、かつマーシャルポストでは『SC』のサインが出されたことで、スタンドのファンは少しどよめいていたが、これも今年から始まったことだったので、やむを得ないことだろう。

 なお、スタート直後にマックス・フェルスタッペン(レッドブル)がクラッシュ、ガブリエル・ボルトレート(アウディ)がスピンをしたのを受けて、レース後、ピエール・ガスリー(アルピーヌ)は、「セーフティカー先導でフォーメーションラップを行うのであれば、もう1周走るべきだった」と、イタリアGPのドライバーズブリーフィングでFIAと話し合う必要を説いた。

 ただし、どこが濡れているかはフォーメーションラップで確認していたはず。フェルスタッペンも「あの場所は乾いているように見えたので、アクセルを踏んだ」と語っており、あるクラッシュはドライビングミスによるものだったと考えるのが自然だろう。フェルスタッペンがミスするのは非常に珍しいことではあるが……。



(Text : Masahiro Owari)